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虎に翼より

今月の言葉はNHK連続テレビ小説「虎に翼」より第55話の言葉です。「国や法、人間が定めたものは、あっという間にひっくり返る。ひっくり返るもんのために死んじゃならんのだ。法律っちゅうもんはな、縛られて死ぬためにあるんじゃない。人が幸せになるためにあるんだよ。」という言葉でした。これは、家庭裁判所の開設に尽力された多岐川幸四郎氏の言葉で、終戦後判事をしていた花岡氏が判事という立場ということで闇市の食料を一切口にすることなく、栄養失調で亡くなられたことに対する悔しさ悲しさ怒りから出てきた言葉と思われます。朝から涙が止まらずドラマを見ていました。

ドラマを見ながらふと頭に浮かんだ言葉があります。それは『歎異抄』の「煩悩具足の凡夫、火宅無常の世界は、よろづのこと、みなもってそらごとたはごと、まことあることなきに、ただ念仏のみぞまことにておはします」という言葉です。この世にあるものは常に変化し、その価値観は常々変わっていきます。私たちが頼りとしていても、時代やきっかけにより大きく変化していきます。そういうものは「まことなきゆえに」と申され、真実は「念仏のみ」と申されます。私たちも様々な物事に執われますが、それはすべてかりそめのことであり、本当の「真実」に出遇った時、その執われの心は薄れていくのではないでしょうか。「念仏のみ」とは阿弥陀様のこの私に対する願いです。必ず救うまかせよという喚び声だけはどんなに世の中が変わろうとも、私が変わろうとも決して変わりません。決して変わらない拠り処に出遇わせて頂くことが本当の幸せなのではないでしょうか。